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『コミュニケーションとしての「消しゴムはんこ」。被災者に寄り添うお坊さんが伝えたいこと。』極楽寺 住職 麻田弘潤さん

『コミュニケーションとしての「消しゴムはんこ」。被災者に寄り添うお坊さんが伝えたいこと。』極楽寺 住職 麻田弘潤さん  お寺でのイベントやワークショップを通して、震災からの復興や福島からの避難者に対する理解を広める活動を行っている極楽寺住職で、消しゴムはんこ作家でもある麻田弘潤さんにお話を伺った。

 麻田さんが19代目住職を務める極楽寺は、小千谷市にある浄土真宗本願寺派のお寺だ。お寺でイベントを開催するきっかけになったのは、2004年に発生した新潟県中越地震。前年に改築作業が終わったばかりだった極楽寺を避難所として開放し、仮設住宅ができるまでの2か月間、80〜100人が本堂に避難していた。翌年からは慰問コンサートの受け入れをしたり、仮設住宅でのボランティアに出向いたりしていたところ、住職が行っていることが噂となり、復興イベントの企画に誘われたという。

 その縁で、2006年から自身のお寺で「極楽パンチ」という、エコをテーマとしたイベントを開催することになった。昼間はエコマーケットを開き、エコに取り組む団体、リユース食器を使った飲食ブース、手作り品のお店などが集う。夜はキャンドルナイトとアーティストによるライブで、電気がない空間で楽しむ場を提供している。このイベントを通じて、麻田さんは企画・運営のノウハウを身に付けることができたそうだ。

 また、麻田さんは「消しゴムはんこのお坊さん」としても活動している。「消しゴムはんこ」とは、消しゴムをカッターナイフで好きな絵柄に彫ってはんこにするハンドクラフトのことだ。
「始まりは極楽パンチなんですよ。スタッフでもブースを出そうという話になって。無地のバックにはんこを押してオリジナルのものを作ったらどうかという案から消しゴムはんこを知りました。」

 元来、手先の器用な麻田さんは、動物や植物はもちろんのこと、お釈迦様などの細かいイラストまでデザインしている。東日本大震災の後には被災地の仮設集会所にボランティアとして出向き、被災者の方たちと一緒にはんこ作りのワークショップをしたそうだ。
「はんこを作っている最中はみんな手元に集中しているから、普段しない話もできたりするんですよ。目を合わせない方が話しやすいっていうカウンセリングの手法ですね。」

 ある時、はんこ作りをしながら、被災者の女性が、津波からギリギリ逃れられた体験を語ったことがあった。それは麻田さんだけでなく、普段から一緒にいた他の被災者も初めて聞く話だったという。

 「その時まで、消しゴムはんこを作ることだけが目的だったんですが、作る過程でコミュニケーションを取れることに気付きましたね。お坊さんが被災地に行って、悩みごとありますか、なんて聞いても壁があるじゃないですか。それが消しゴムはんこのおかげで、被災者が今までできなかった話まで口にできたのはすごいと思って。お坊さんという仕事においても人とのコミュニケーションは大切なので、そのときからお坊さんの格好をして消しゴムはんこをやるようになりました。」

 被災者とコミュニケーションを取るという、新たな視点を見いだした麻田さん。現在では、ワークショップのために年1回東北地方に訪れるほか、九州など全国各地のお寺に出向いて地元の人たちと話をしながら、消しゴムはんこの楽しさを伝えている。

 一方で、ワークショップを通じて知った避難者の実情を元に、麻田さんは福島原発や自主避難をテーマにした講演活動も行っている。元々、京都にある浄土真宗本願寺派の本山が、人権問題を扱っており、麻田さんもその研究員を務めていたことから依頼されたものだ。

 自主避難者に対する差別的な扱いの実態などを聞いて心を揺さぶられたことや、以前からエコをテーマとした極楽パンチをやっていてライフラインである電気やその先にある原発に対する意識も持っていたことも活動の後押しとなった。

 「原発事故が起きた時に被害を受けるのは人々の生活そのものなんです。だから私は自主避難者の救済を行いたいというよりも、「次、日本になにかあった時には」と言って、今を見ていない人々に現実の話を伝えていきたい。」

 消しゴムはんこの活動はこうした話を伝える面でも役立っているという。
「こういう活動をやっていると、全国のお寺さんだけでなく、専門用語を知らない人にも、原発問題に関心を持ってもらうきっかけになると思うんです。」

 消しゴムはんこのワークショップを通して、被災者とより深いコミュニケーションを育み、被災者の思いを多くの人々に訴え、伝えていく。麻田さんは、今後も被災者に寄り添い、誰にでも分かりやすいように原発問題や自主避難の実態を伝えていきたいと語る。被災者の生の声から生まれる麻田さんの言葉はより多くの人々の心に響いていくことだろう。


・新潟小千谷市のひらかれたお寺 浄土真宗本願寺派 極楽寺
http://gokurakuji.info/

・消しゴムはんこのお坊さん 麻田弘潤
https://www.facebook.com/keshigomubozu/


(2017/09/25 にいがたNPO情報ネット http://www.nponiigata.jp

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