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『ひきこもりの若者の居場所をつくる―うつ病を体験して見えてきたこと』〜NPO法人新潟ねっと代表理事 村山 賢さん〜

『ひきこもりの若者の居場所をつくる―うつ病を体験して見えてきたこと』〜NPO法人新潟ねっと代表理事 村山 賢さん〜  「NPO法人新潟ねっと」代表理事の村山賢さんは、新潟市西区で、悩みを抱える若者を応援する居場所「イツモノトコ」を今年7月に開いた。現在週3回、午前10時から午後3時まで開放している。室内の装飾品はレトロ感があふれ、とてもお洒落であり、木のぬくもりを感じるカウンターがとても居心地のよい空間を演出している。村山さんが夫婦で西区に若者の居場所をつくった理由と経緯を追った。

 村山さんは新潟市東区で生まれ育ち、大学卒業後は建築会社の営業職として就職。職場で設計士の奥様と出会い結婚、20代で会社の管理職になったが、営業の第一線で活躍していた32歳の時にうつ病を発症したことで転機が訪れた。

 病院に通院していると、大勢の患者さんがいることに気づいた。「自分は1〜2年たてば復職して戻れる場所があるが、彼らは病気を克服した後どこにいくのだろうか、という疑問がずっと頭に残っていました。今後の彼らの居場所はどこなのだろうと。そこで、福祉の勉強をしようと思い立ち、仕事をしながら大学に通い、社会福祉士の資格を取得しました。」

 復職後は労働条件等について優遇されていたが、無理もできない。ただ、自分で何かをやりたいという気持ちが常にあった。そのような状況の中、奥様も病気にかかり入院した時にも、多くの患者さんがいることを目にして、居場所づくりへの気持ちが加速した。「僕は病気をしたけれど生きている。生き残ったということは何かお役目があるのだろう、と人の為になにかできることがあればしたいという思いが強くなりました。」ゆっくりとした口調で村山さんは語る。

 さらに、会社の新卒の採用や新人教育の中で新入社員と接するうちに、今の若者について考えが及ぶ。「支援の対象は若者にしよう!現代に生きる若者は夢が持てない。そして、すぐに会社を辞めてしまう。しかし、仕事に耐えられない環境を作っているのは会社であり、更にその先には社会を変えなければならない、と大きなターゲットが見えてきた。この数年の間に「ひきこもり」の問題が顕在化してきた。様々な機会で問題提起をしてきたが、「誰かがやらなくちゃならない」という声が多いのになかなか具現化しない。それなら自分がやろう!」と。

 「うつ病のリハビリ中は朝から晩までゲームセンターで時間を過ごし、行く場所がなかった。居場所があって面白い人がいたらそこに通うのではないかと、西区の社会福祉協議会や新潟NPO協会にも相談し、ここに居場所を作りました。」村山さんの人柄に共感し、協力してくれる人たちがたくさん集い、今年の5月のGWから準備を始め、準備期間1か月半で居場所ができた。

 ひきこもりのきっかけは十人十色であるが、中学、高校でつまずくケースが多いという。「20代で何もかもできなくなってしまうのはもったいないですね。」と村山さん。「例えば、アクセサリー作りは通う人たちで作っているが、作る達成感を持ってもらうことが大切です。そして、ここに通うこと。さらに通う目的を明確にし、その作業に対して対価をもらうこと、そういう経験が今後に繋がればいいなと考えています。」と奥様もやさしい口調で語る。

 「若者が毎日通う居場所ができたら、その後は就労支援。来年からこの場所に立ち上げる予定で、利用者ひとりひとりに合った内容を考えています。まず挨拶から始めて、次は人とのコミュニケーションができるように、さらにはビジネスマナーまで学び、会社の面接まで行けるように訓練をします。そして、就労支援の後は企業とのマッチングを図りたいと考えています。就職した後も定期的にフォローを行い、職場に定着するまで若者につき添いたいと考えてます。」と村山さんはにこやかに語る。

 村山さんは来年より新潟市を囲う8町村の就労支援事業を手伝うことになった。社会福祉士がいれば運用できる制度を各地に構築する予定だ。

 「社会福祉士が制度の下で仕事をするばかりではなく、外に出て困っている人、制度の谷間にいる人たちのためにできることを探して、解決策を実行して欲しい。その中でいいものがあれば、自分が所属する機関に持ち帰ればいいわけで・・・。社会の為になるために社会福祉士なんていう立派な資格があるわけだし、それぞれの社会福祉士がオリジナルな社会貢献を始めれば社会は変わると考えています。でも、誰かがやらなければならないってことがあれば、僕は自分でやりますけど。」と笑顔を見せる。

 オープンからもうすぐ5か月。若者の気持ちを受け止め、それに対してストレートに反応し、どんな人にも全力でぶつかる。誰に対しても自然に接する村山さんは若者だけでなく、多くの人に受け入れられている。今では利用者は若者にとどまらず、20〜50代の方まで幅広い。仕事帰りのサラリーマンや地域のお年寄りも利用している。

 やりたいことがあればすぐにやる、行動が早い村山さん。緻密に準備を重ねて進む性格の奥様。正反対の性格の二人が絶妙なバランスでいる。それが「イツモノトコ」を心地よい空間にしているのだろう。

 「病気を境にすべてにおいて、今に導かれている感じがします。そして、人との出会い、ご縁をとても大切に感じます。」村山さんは、夫婦ともに病気になったことがきっかけで社会に対する価値観が変わったという。

 今後は「イツモノトコ」がいろいろなところにできたらいいと夢を語る。「多くの人が社会の歪みを感じていると思います。どっか変だなって。それって、大人が変わらなければ駄目で、単に若い人を責めてはいけないと思う。大人が変われば社会が変わる。だって、若い人からダメってことにはならないでしょ。大人がダメだから、若い人に影響が出るわけだから。今後は「ひきこもり」を身近な問題として提起し、常に新しいことに挑戦をしていきたい。」

 「社会とか会社って圧倒的に辛いことの方が多いですよ。そんなもんです。お金を貰うってことはそんなに甘いことじゃないし。そんな中でも、何か楽しいなってこととか、苦しいけど達成してやろう!!みたいな目的を持っていたら揺るがない。」と若者へメッセージを送る村山さんの、新たな挑戦に今後も注目していきたい。


・NPO法人新潟ねっとサイト
http://niigatanet.wix.com/niigata-net

(2015/11/25  にいがたNPO情報ネット http://www.nponiigata.jp

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