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自分の好きな自分で生きる−まとう恵子さん−

自分の好きな自分で生きる−まとう恵子さん−  特定非営利活動法人ボランティア亀田で、高齢者のための地域の茶の間づくりやコミュニティを大切にした活動を続けるまとう恵子さんは、東京生まれの東京育ち。ご主人と出会う前は、東京にある外資系の商社に務めるキャリアウーマンだった。今から約30年前、華やかな世界から一転、ご主人のご祖母の介護のため、新潟へ移り住んだことをきっかけに彼女の人生は大きく変わった。

 高齢者を始めとする弱い立場の方々を支援する様々な場面にまとうさんはいる。改めて本人に職業を尋ねると「主婦です」と笑顔で答える。「どの道でもエキスパートになるとそれを極めなきゃならないでしょ?もちろん責任も生じる。そうすると時間的なものや様々な部分に制約が出てきて、結局家族や周囲の人に必ずと言っていいほど負の代償が生じてくる。私はそれが嫌なの。一番大切なのは家族だから、やっぱり私の職業は主婦なのよね」。まとうさんはいつも笑顔だ。「家族を大事にしたいからこそ、いつも輝いている自分でいたい。だから自分で自分を縛るようなことはしない。深く入り過ぎないように、自分のポジションは自分で決められる位のいい加減さが肝心。いい加減っていうのはいい(良い)加減ね」。

 ご主人と結婚した当初、東京を離れるつもりはないときっぱり宣言していたまとうさんだが、その日は突然訪れた。ご主人は倒れたご祖母を自ら介護したいと、故郷の新潟へ帰ることを決意。当然まとうさんにも一緒に来て欲しいと頼んだという。当時には珍しく、恵まれた環境の中で外資系企業のキャリアウーマンをしていたまとうさんにとって、戸惑いも大きかったらしい。「最初は『約束が違う』ってケンカしたり悩んだりしたけど、どこに住むことになったって同じ日本。そんなに神経質になることもないかって思い直してね。でも来てみたら大間違い!カルチャーショックで本当にノイローゼになりそうだったの」。介護と一言で言っても現代のそれとは大きく異なり、老人介護用のおむつもなかった時代。特に田舎では汚れた布のおむつでも川で洗う。気候も東京と新潟では全くと言っていいほど異なる。東京では冬でも外で布団が干せるが、新潟では太陽が顔を覗かせることも稀で、何ヶ月も雪に覆われた中で生活する。食生活や文化、風習、しがらみ。それらにがんじがらめになって自分を見失いそうになった時、ふと気付いた。「私が幸せじゃなきゃ、主人だって幸せじゃない」。それからは肩の力が抜けて、常に“自分が好きな自分でいること”を心掛け、本来の天真爛漫さを取り戻していったという。「自分を知ることで自分という存在を思いっきり味わうの。そして人を知ることで愛が生まれる。その人を知らなければ好きにはなれないでしょ?」
 ある時、古くからの知人が言った「人材という言葉は本来『人財』と表すものだと思う。人は財産であり宝なのだ」という言葉は、今もまとうさんの中に息づいている。自分を大切に思うのと同じくらい他人をも思いやる気持ち、それも押し付けではなく、その人を認め受け入れることが大切なんだと、改めて感じた言葉だった。

 コミュニティビジネスや地域通貨も推奨するまとうさんだが、それらは価値観をどこに見出すかによって結果は大きく異なってくるそうだ。「観光地でもない農家の多い地域で、よく野菜の産直なんかやってるでしょ。あれって誰が買うんだろうとか儲けがあるのかなぁなんて心配する人がいるけど、儲けなんてなくていいのよ。だって儲けようと思ってやってる訳じゃないんだから。奥さんやおばあちゃん達の憩いの場であったり情報交換の場であったり。販売する場所まで野菜や道具を運ぶ作業だって、それだけでリハビリになるんだから。それに農家って言っても皆が皆同じものを作ってる訳じゃないでしょう?儲け主義じゃない、そういう形の方がむしろ長続きするのよ。」まとうさんはそんな人達を応援し見守り、訪ねていって会話をする。
 また、定額で地域を循環するコミュニティバスの運行も計画中だ。切符は1枚150円ほどの設定のため、1家族に付き10枚綴りを負担金として購入してもらうことや、それ自体に地域通貨の役割を持たせられないかと思案しているらしい。更に、プライバシー保護が叫ばれる昨今ではあるが、災害時や平時でも、何かあった際には体の不自由な人や独居老人の家にすぐに駆けつけられるよう登録制で個人情報を提供してもらい、有事の人間マップを作成することに意欲を見せるなど、地域に根付いた活動はまだまだ広がりを見せる。
 その地域で生きているからこそ、まとうさんの福祉のスタイルは「人に何かをしてあげたい」というより「自分がこうしたい」という思いから始まる。自分を尊重し、人を尊重する。そんなまとうさんの福祉はそっと寄り添うように優しい。

(2005/09/10 にいがたNPO情報ネット http://www.nponiigata.jp

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