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山の人間の強さを復興の力にー大橋昭司さんー

山の人間の強さを復興の力にー大橋昭司さんー  中越大震災で甚大な被害が出た旧小国町の法末集落。大橋昭司さんは田んぼと自身が経営する鉄工所で生計を立てる傍ら、振興組合長として集落内にある宿泊・体験施設「やまびこ荘」の管理人となり、集落の未来のために奮闘している。

 法末集落は、10年前から「グリーンリース事業」や姉妹都市である武蔵野市と行っている「親子体験ツアー」で、集落でとれた米を販売したり、「田植え・稲刈りツアー」、「ホタルツアー」などを企画しており、毎年1300人もの来村者がいる。そのツアー客が宿泊する場所がやまびこ荘だ。

 大橋さんは営農組合の作業所で奥さんと一緒に精米作業をしているところを、激しい揺れに襲われた。近隣の住民と一緒に「やまびこ荘」のグラウンドに避難した。非常に寒かったため、すぐに焚き火をし、高齢者や子供のためにテントを出すなど、夜を明かす準備をした。そして、やまびこ荘での避難生活4日目、小国町役場職員の指示によって山を下りた。
 
約40日間の避難所生活を集落の人たちと過ごした。避難所にグリーンリース契約をしているお客さんが心配して次々と電話をくれたり、ボランティアに来てくれた方もいた。大橋さんは「応援してくれる人のためにも、なんとか米を出荷したい」と思った。避難所生活をしている間も毎日集落まで行き、米の出荷準備を終えた。

 仮設住宅に移った大橋さんは、経営する鉄工所も震災から1ヶ月後に再開させる。奥さんと一緒に毎日仮設住宅から除雪されているところまで車で行き、そこからは歩いた。行き来に時間がかかる上に、暗くなってからの移動は人が誰もいない集落では非常に危険であったが、震災前に受けた仕事を終えることができた。

 春になったものの法末集落につながる県道はまだ地震の爪あとを残す。「やまびこ荘」の風呂やトイレも使えず宿泊施設としての機能は失われていた。大橋さんはやむを得ず、今年のグリーンリース事業は中止し、親子体験ツアーも小国町の森林公園の施設を使ってもらうことにした。
 大橋さんは法末集落のものを使った商品開発という、今後の地域づくりのアイデアを沢山用意しているが「まず道路とやまびこ荘が復旧しないことにはどうにもならない」と言う。これまでも、ツアー客に山菜や山野草などを差し上げていたが、山に自生するカタクリやイカリソウ、ショウジョウバカマなどは、そのまま持って帰っても育つことはない。「きちんと鉢に植えて花を咲かせた状態か、球根なら育てることができる。山のものをきちんとした商品として売りたい」と言う。「地震で田んぼができなくなった人が多くいる。田んぼ以外で稼がなくてはいけない」と話し、今後の商品開発、販売体制作りに意欲を見せている。

 こうした新しい事業は集落で深刻な問題となっている高齢化対策にもつながる。「産業が安定すれば若い人は残る。どこかに務めることばかり考えるのではなく、自分達で山間地に産業を興すことが重要だ」と大橋さんは話す。「まず自分達でがんばって商売できるようにしなければ外からは人は入ってこない。外から入ってきて何かやろうとする人がいれば、その人を一生懸命支援したい」と、集落での産業作りとその担い手の育成に取り組むことが集落の将来を左右する重要なことだと話した。大橋さんたち山の人間の強さが復興に向けた大きな力になると感じずにはいられなかった。

(2005/8/10 にいがたNPO情報ネット www.nponiigata.jp)

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