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不可能を可能にする、まちの車屋さんー佐久間 均さんー

不可能を可能にする、まちの車屋さんー佐久間 均さんー  高齢者や障害者とその家族にとって、病院への送迎や買い物などの日常生活に、車はなくてはならない存在となっている。新潟競馬場の前に有限会社「カスタムセレクト」がある。佐久間均さんが代表取締役として経営するこの会社はRVや特殊車両も扱っているが、普通乗用車やワゴン車などを福祉車両や介護車両に改装している。

 佐久間さんが有限会社「カスタムセレクト」を設立したのは今から14年前の29歳の時であった。当時はキャンピングカーなどをドレスアップする「カスタムカー」を主に扱っていたが、だんだんと派手になる車を扱っているうちにその乗車人口が減ってきていることを感じたと言う。「車に限ったことではないですが、人と違うことをしたいと思って行動しても、結局人目を気にしていることってあるものです。」

 「カスタムセレクト」の敷地内には、本格的キャンピングカーやキャンピングトレーラーがずらりと並んでいる。中はキッチン、シャワー、トイレ、冷蔵庫等が装備してあり、全国旅して周りたくなるような車両がいっぱいだ。他に若者向けの紫やピンクといった鮮やかな色や尾びれが付いたようなキャンピングカーもある。「お店の前を通る人には、派手なキャンピングカーの改装しかやっていないと思われていますね。福祉車両の改装はまだまだ知られていないのが現状です。」

 佐久間さんがキャンピングカーの存在を知ったのは高校1年の夏であった。友人と五頭山へキャンプに行ったとき、近くにキャンピングカーが泊まっていてその便利さに感動したという。「当時のキャンピングカーは、畳が敷いてあったり家具がついていたりしました。車の中があんなに機能的になるとは思ってもいませんでした。」小学生の頃はおとなしくクラスでも目立たない佐久間さんだったが、中学生になって変化があったという。さらにキャンピングカーとの出会いによって「自己表現」の楽しさを知ったという。

 高校を卒業してから建具職人として働き始めた佐久間さんは、趣味で自分の車を改装していた。「エンジンにはあまり興味がなかったのですが、建具職人の技術を使って内装を自分の好きなように飾っていましたね。」実際に「カスタムセレクト」に展示してある車の中を見せてもらうと、座席の下に引き出しの収納があったり、ドアの取っ手が握りやすいようになっていたり、元建具職人の技が光っていた。
 建具職人として3年間働いた佐久間さんは、21歳で「自分は本当にこの仕事を一生続けるのか」と考えた。二十歳という人生の節目を迎え、「自分のお店を持ちたい」と思うようになっていた。「当時、やりたいことが『ログビルダー』というログハウスを建築する仕事と、『キャンピングカー』を扱う仕事の2つを考えていました。」「ログビルダー」は基本的に寒冷地で活動し、自給自足的な生活になる。「ログビルダー」はいつでもできるという考えで、「キャンピングカー」の道を選んだという。

 東京の自動車整備会社に勤め始めた佐久間さんは建具職人の技術を活かし、木工関係の部門に配属された。23歳で栃木の会社に転職し、車づくりのすべてを学んだと言う。「車を改装するのは、家を建てるのと同じくらいの技術が必要です。家具、電気、ガス、水道、塗装、板金、FRP(強化プラスチック)、縫製、それに忘れちゃいけないのが、保安基準です。」これらをすべて学ぶのに6年かかったという。

 その後、29歳で現在の会社を設立し、5人の従業員を抱えるまでになった。福祉車両の改装を始めたのは今から3年前のこと「今まで、年齢の区切りでものを考えてきたのですが、このときも40歳でした。経営者としての考え方をきちんと学ぼうと思って8ヶ月間の研修に行きました。」その時、脳裏に焼きついたのが「企業の社会貢献度」であったと言う。「今まで、若い人の車の無理難題の要望を聞いてそれを形にしてきました。そこで培ったノウハウは、もしかして不自由な方々を助ける為の、福祉車両を作るための準備期間だったのではないかと思うほどでした。」と熱く語る。

 大手メーカーの製造・販売している既成の福祉車両は、平均的な症状にのみしか対応できていないのが現状である。そこからもれてしまった人たちは、非常に使い勝手の悪いまま、危険なまま、我慢して乗車しているという。「特に、高齢者の方は自分が我慢すればいい、といった思いが強いです。また、新潟の県民性でしょうか、不満を言わない方が多いのには驚きます。」

 近年、家のリフォームが流行っているが次は車の時代が来ると感じている。「我が家も介護する両親のために、そろそろ車を使いやすく改装しようか」とお茶の間で会話される日が来ればと願っているそうだ。介護保険で家の改築をした場合、保険の対象になるが車はならないと言う。「福祉車両の改装は利益の出ない分野であることは事実です。今後、国や自治体の制度が変わって車の改装に保険が適用されたりすれば利用も増えるでしょうね。」佐久間さんは県や国の機関にも相談を持ちかけている。

 「不可能なことってないですか?」という私の質問に「大抵は対応いたします。保安基準の範囲内で。」と笑って答えてくれた。佐久間さんたちの活動は、クルマ社会で生活する私たちの心強い味方である。これからもまちの車屋さんとして、多くの人の「遠くへ出かけたい」をサポートしてくれるだろう。

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