にいがたNPO情報ネット
 フォントサイズ: 

恥じかき、汗かき、要約筆記ー石黒美津子さんー

恥じかき、汗かき、要約筆記ー石黒美津子さんー  要約筆記とは、健聴者が聞き取った話の要点を、聴覚障害者に文字で伝える通訳である。聴覚障害者のコミュニケーション方法は、手話や要約筆記、読話(読唇)など。聴覚障害者には、音声言語を習得する前に失聴した「ろうあ者」、聞こえにくいが、まだ聴力が残っている「難聴者」、音声言語を獲得した後に聞こえなくなった「中途障害者」がいる。手話や読話の取得には、学習と訓練が必要だが、要約筆記はすべての人に受け入れやすいものとなっている。柏崎市のボランティアグループ「山百合」の代表、石黒美津子さん(50代)は、要約筆記をすべての人が安心して暮らせるコミュニケーションのひとつとして考え活動している。

 「山百合」は柏崎市近辺の3市町村で平成8年4月に設立したボランティアグループで、会員は20人だが、実質活動しているのは、現在7,8人。「無理しないで、できるところをやろう。ということで、いろんな事情で、休業している人もいます。」と会の日常を、石黒さんは語った。

 要約筆記者として、石黒さんは「山百合」以外にも、「大地と人」というまちづくりを行うグループに参加している。「街を住みやすくしよう」という、バリアフリー化をめざした活動を行っており、現在は、柏崎市議会の傍聴席に要約筆記者をつける運動をしている。その他、「大地と人」では、海外(主にアジア)のストリートチルドレンと言われる子供たちに物資を援助している。「周りの人たちに恵まれ、いろんなところに参加する機会があっただけ。人とのつながりが、今の私の活動を広げています。」と石黒さんは、参加したきっかけを振り返る。

 講座やイベント会場で、OHP(オーバー・ヘッド・プロジェクター)やOHC(オーバー・ヘッド・カメラ)を使って、3〜4人で交替しながら書いていく要約筆記は、講師の内容を聞き逃したときや、略語の意味がわからないときなど、健常者にとっても大変便利である。「要約筆記を、耳の聞こえない人だけのものと考えず、広い意味でとらえると、ユニバーサルデザインだと思うのです。そのため、誰が読んでも意味のわかる文章にして完成させなければいけないことが、大変です。」そういって、石黒さんは文字の持つ怖さについても語った。「同じ『ほけん』という言葉でも、『保険』なのか、『保健』なのか、発言者の意図をつかまなくてはいけません。」そのため、講座やイベントのテーマにそった事前学習は欠かせないという。

 裁判所での立会いや、弁護士との間に入って、加害者や被害者の立場になった聴覚障害者に、ノートを使って内容を伝える活動もしている。「新聞を読んだり、最近はNHKの手話ニュースを見て専門用語の勉強をしています。言葉だけでなく、その内容まで理解できなければ意味がありません。」情報化社会といわれる今、石黒さんたちの行う要約筆記の活動は全国に広がりつつある。

 平成7年に初めて行われた「要約筆記養成講座」に参加したことが、要約筆記と出会うきっかけであった。当時は講座に参加しただけで、県に登録できたが、今は3年の実績がないと登録されないという。「実力があるのに登録できず、活動できない若い人を見るともったいないと言う気持ちになります。私は軽い気持ちで初めてしまったのが、逆に良かったみたい。聴覚障害について、何もわからず、書けなくて当然という気持ちで講座を受けていました。」興味があることには何でもチャレンジする、石黒さんの性格は若いメンバーにとって大きな励みとなっている。要約筆記を続けていると、「書けない」ことに対するプレッシャーがストレスになるという。「これを乗り越えた人は、強いです。私たちはよく、『恥じかき、汗かき』といって活動しています。」

 3〜4人が10分交代で行う要約筆記は、メンバー同士の連携が欠かせない。「メンバーの体調や、活動できる家庭環境にあるのかなどを考えて、行動します。長年やってきた仲間とのつながりは、本当に大切。だから、実働メンバー以外の休業メンバーにもいつでも復帰できるよう、会議や飲み会(笑)に誘っています。」

 転勤族の石黒さんは、要約筆記を始めて、自分の生活にはりが出たという。また、知的障害者の施設で働いていたことにより、「障害には横のつながりがあるのだということがわかってきました。分野で区切って考えていたが、そうではないのですね。」と考えている。「今年、喫茶店を始めた二人の娘が、聴覚障害のお客さんが来ると、さっとペンとノートを持って行くようになりました。このような娘たちの行動が、お客さんにとって安心するようです。」と家族の行動にも変化が出たと言う。

 興味をもって何事も前向きに捉える石黒さんは、「山百合」のメンバーからの信頼も厚い。新潟県内にある他の要約筆記グループとも連携をとりながらの活動は、やりがいのあることだという。障害があるなしに関わらず、周りの人を巻き込んでいくやさしい力を石黒さんに感じた。

(2003/12/10 にいがたNPO情報ネット http://www.nponiigata.jp/

TOPへ戻る 一覧へ戻る