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ひとり三役の地域づくり−丸林礼一さん

ひとり三役の地域づくり−丸林礼一さん  職業は住職、会社社長、そしてNPO法人理事長。丸林礼一(まるばやし れいいち)さんは1969年東頚城郡松之山町に生まれる。まだ33才の若さでこの肩書きはユニークだが、経歴の方も負けじとユニークだ。

 3年前、亡くなったお父さんに替わり実家の寺を継ぐために東京から帰ってきた。高校まで地元で育った丸林さんは、東京の某私大スキー部に推薦入学。大学卒業後は大手自動車メーカーに就職。営業や人事、広報など様々な部署で活躍し、営業マン時代は全社一の成績で表彰されたこともあった。

 こうして社会の最前線でバリバリと仕事をこなす一方、会社には内緒でカメラマンや俳優、ラジオパーソナリティー、スキーのインストラクターなど、様々な副業にもチャレンジ。それらの活動を通して得た大きなネットワークは現在も生きており、「私の大きな財産です」と語る。

 十数年ぶりに地元に戻り、住職の収入だけでは生計が立てられなかった丸林さんは、知人の勧めでホテルの支配人になる。「支配人」というと聞こえは良いが、業界不振の折、早朝の除雪作業に始まり、リフト乗場から食堂、フロントまで全てを自分でやった上で、経営面にも気を配るという大変な仕事だった。毎日の睡眠時間は大体2時間位。そんな生活が1年間続いた。
 
 あまりの激務と、「せっかく松之山に帰ってきたんだから、自分で何かを始めたい」との思いから、丸林さんはホテルの仕事を辞して広告代理店「有限会社アールズビジョン」を設立する。ここで、東京時代に培ったネットワークが大いに力を発揮することになる。新しい一歩を踏み出した丸林さんだったが、そこにさらなる転機が訪れる。

 松之山町には、都会の子どもたちを受け入れ、丸一年かけて自然豊かな山里での生活を送ってもらう「山村留学」を進める施設「松之山学園」がある。当時、町では学園の運営をある財団に委託していたが、財政が逼迫する中十分な予算が確保できず、その財団は運営から手を引くことになってしまった。14年の実績を積み上げてきた学園を何とか残したいと考えた町は、丸林さんに白羽の矢を立てた。

 県内有数の高齢化率と止まらない若者の流出、耕作放棄地の増加・・・ここに「豪雪地帯」というハンディキャップも加わり、日本の中山間地における様々な問題はここ松之山においても例外ではない。松之山学園の運営の話が舞い込んだとき、丸林さんはこうした問題を住民自らで解決していく新しい仕組みはつくれないかと考えた。あれこれと思いをめぐらせた末に辿り着いたのは、「NPOをつくってそこが学園を運営する」という方法だった。

 平成14年6月、東頚城郡では初めてのNPO法人「ふるさとワッショイ」が発足。丸林さんは理事長に就任する。従来からの山村留学に加え、TBSラジオ聴取者の会「遊学舎」とタイアップして、農業体験、蛍鑑賞、雪堀り体験など1年を通したイベントを用意。毎月20名前後の参加者を得ている。今後は古民家をリフォームしたゲストハウスを設置し、会員制で短期・中長期の滞在にも対応できる体制を整えるほか、親子が一緒に参加できるプログラムの開発にも力を注いでいく。

 地域住民の参加や協力を得る上で、住職という仕事は大きなメリットがある。代々培われた大きな信頼があるからだ。また、自分の会社「アールズビジョン」の方も、外部との交渉や契約を行う上でNPOでは通りの良くない部分を補う役割があり、首都圏とのパイプにもなっている。「今まで色んなことに首をつっこみ、何をやっているのかわからないようなところがありましたが、ここにきて全てがつながってきた感じがします。」と丸林さん。最近は新潟市のラジオ局・FMポートでもパーソナリティーとして活躍している。曰く、「山村には様々な魅力があり、メディアが欲しがる情報もたくさん埋もれています。大事なのは、その間を誰がどうコーディネートするか、ということだと思います。」

 丸林さんは、地域におけるお寺の役割についても独自の考えをもっている。「お寺は法事をするだけの場所ではありません。本来は地域の人が集まる共有の場であり、よろず相談所(駆け込み寺)や子ども達に学問を教える場(寺小屋)といった様々な機能をコミュニティーの中で担っていました。今の時代に合ったお寺の活用法をもっと考え、地域に還元していければと考えています。」

 丸林さんのユニークな肩書きは、全てに意味があり、見事につながりあっている。「寺の住職」と「NPO」という新旧の非営利業。「会社社長」という顔と、町の施設である「松之山学園」の指導員としての顔。わが国のNPOに関する議論でよく耳にするもののひとつに、官・民・市民が渾然となった複雑な「公益」の姿があるが、そのひとつのモデルが丸林さんの中にあることを感じた。

(2002.11.18 にいがたNPO情報ネット www.nponiigata.jp)

※2003年6月に丸林礼一さんは、NPO法人ふるさとわっしょいの理事長を退任いたしました。


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