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自然農法から地域通貨へ−宮尾浩史さん

自然農法から地域通貨へ−宮尾浩史さん  豊栄市の宮尾浩史(ひろふみ)さんは、「自然農法」による稲作と養鶏に取り組む専業農家。「自然農法」とは、農薬・化学肥料・配合飼料などを一切使わず、植物や家畜が持つ本来の生命力を尊重し、最大限生かして育てる農法のこと。従来農法と比べると環境に対する負荷が非常に少なく、健康的でおいしい食べ物をつくることができ、世界中で注目を集めている。
 宮尾さんは農業を始める前、9年間新潟市の食品加工会社で働いた。農家の4人兄弟の長男として生まれ、いずれは家業を継ぐ立場ではあったが、学生時代に自然農法を確立した福岡正信氏の思想に出会い、以来理想と現実のギャップの中で「兼業ではなく、専業で自然農業をやりたい」との思いを温めてきた。実際、自然農法による農業経営は非常に難しい。何度も失敗を繰り返しながら、今なお試行錯誤が続く。
 転職して5年目の平成10年、宮尾さんは「地域資源と農業を考える会」というグループを立ち上げた。豊栄市・新潟市などの農家・自営業・会社員・主婦らが集い、環境や食に関する勉強会や、家庭生ごみの回収とボカシづくり、農作業・食品加工体験会などの活動を行っている。
 当初宮尾さんは、この会を通して、利用できるのにされていない地域の資源と農業を結びつけた循環システムをつくりたいと考えていた。ここでいう「地域の資源」とは、食物残渣や籾殻、家畜の糞尿などのほか、身障者や高齢者といった「マンパワー」も含む。ところが、会に集まってきた人々の声に耳を傾けていく内に、「みんなでテーマを出し合おう」ということになり、活動の中心は「システムの構築」から「学習・体験」へと方向を変えていった。それについて宮尾さんは「自分の中に確たる信念や、人に説明できるだけのビジョンが足りなかった。」と振り返る。しかし、そんな宮尾さんの、常に初心で周囲の言葉に耳を傾ける人柄に惹かれ、ずっと参加している会員も多い。
 「地域資源と農業を考える会」は、昨年、「結い(ゆい)の会」と名称を改めた。「結い」とは、日本各地の農村集落で昭和の中頃まで営まれていた相互扶助のシステムのこと。会の活動はますます発展を遂げており、今年は昨年から検討を続けてきた「地域通貨」の導入を目指している。豊栄とその周辺だけで通用するお金を流通させることで、昔あったような地域内の支え合いを形にしようというひとつの試みである。
 「一時は集まる人も減り、『この会はもう終わりだなー』と思ったことが何度もあった。それでも残ってくれた人たちのおかげで会は続き、そこから新しい意識や新しいつながりが生まれている。」と、宮尾さん。農家の長男として生まれ、就職、転職、会の立ち上げ、そして地域通貨への取り組み − 全て試行錯誤の連続だが、一瞬、一瞬は常に充実していた。その秘訣は何か? 曰く、「自分の心にウソがないことをしたい。価値観は変わっていくかもしれないけど、その瞬間は自分に正直に生きていたい。」 柔軟に、粘り強く、信念を行動に移す − 宮尾さんのそんなライフスタイルに、NPOの本質が重なって見えた。

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